この作品について
ブロード・リスニングはSF的想像力を取り入れたドキュメンタリーです。政治をより透明で参加型にするオープンソース・ツールを開発する安野と若いエンジニアたちの姿を追います。日本で最も新しい政党のひとつであるチームみらいが、硬直した政治制度の中で「ブロード・リスニング」を実装しようとする試みを描きます。
さらに本作は近未来にも踏み込みます。共同制作された思弁的なSFシーンを通して、チームみらいが目指す社会を可視化します。そこにあるのは技術的ディストピアではなく、デジタル・ツールによってより深い参加が生まれる「共有された現実」です。現在の政治の現実と未来の可能性を交差させながら、日本の民主主義を更新できるのかを問いかけます。
補足:グローバルなデジタル民主主義の潮流
安野貴博の実践は、テクノロジーによって民主主義のプロセスを再設計しようとする世界的な潮流の一部です。ソーシャルメディアのようなデジタルツールは分断を増幅してきましたが、新しい「シビックテック」はその逆を目指し、合意形成と協働のための仕組みを設計します。
この潮流の重要な思想的ガイドが、台湾初代デジタル担当大臣 Audrey Tang と経済学者 Glen Weyl の共著 Plurality です。本書は、社会的な差異を橋渡しし、多様性を前進の力として活かす技術設計を提案しています。
代表的な実践例は台湾の先駆的プロジェクト vTaiwan です。市民・専門家・行政がオンラインとオフラインを横断して複雑な公共課題を討議し、Polis などのツールを用いて、Uber規制やAIガバナンスのような対立的テーマでも合意形成を実現してきました。
Polis自体も重要なイノベーションです。非営利団体 Computational Democracy Project が開発した対話・調査プラットフォームで、機械学習を「エンゲージメント最大化」のためではなく、異なる立場を横断する「集団知にもとづく合意点」を見つけるために用います。
日本でもこの動きは広がりつつあります。安野の政党 Team Mirai と超党派プロジェクト Digital Democracy 2030 は、政治の透明性と市民討議のためのオープンソース・ツールを日本の文脈で実装しています。加古川市のような自治体でも Decidim 等を使った参加型の取り組みが進んでおり、より応答的でしなやかな21世紀の民主主義をつくるための国際的実験が共有されています。
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